大豆の調達
大豆などの豆類は、植物性たんぱく質を豊富に含む作物です。また、根に共生する微生物の働きによって大気中の窒素を固定し、植物が利用できる形で土壌中に残します。パタゴニア プロビジョンズの「オーガニックみそ」は、リジェネラティブ・オーガニック認証取得を目指して栽培された不耕起有機大豆を使用し、健全な土壌生態系の構築に取り組んでいます。
大豆の栄養:小さな粒に大きな栄養
小さな粒に、植物性たんぱく質をはじめとする多様な栄養が含まれている。
写真:Taro Terasawa
日本の食を支えてきた植物性たんぱく源
大豆は、米とともに日本の食生活を支えてきた作物です。中国を起源とし、日本では「五穀」の一つとして利用され、味噌や醤油、豆腐など多様な食文化を育んできました。獣肉の摂取が限られていた時代には、重要なたんぱく源でもあり、「畑の肉」という異名はその役割をよく表しています。
大豆(国産・黄大豆・全粒・乾燥)は、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素を含み、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル、ビタミン類、食物繊維も含んでいます(日本食品標準成分表 八訂 増補2023年版)。環境や食の選択肢への関心が高まるなか、大豆は植物性たんぱく源として国際的にも注目され、その価値があらためて見直されています。
環境:農地で電気と食料をつくるソーラーシェアリング
ひとつの場所で電気と食料をつくり出す
「オーガニックみそ」の原材料となる大豆畑が広がるのは、千葉県匝瑳市飯塚・開畑地区です。1980年代に造成されたものの、その後は計画が進まず、耕作放棄が進んでいた土地に、2014年、市民エネルギーちば株式会社がソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を導入しました。市民エネルギーちばが発電事業を担い、匝瑳おひさま畑は有機JAS認証を取得し、農業を担っています。パタゴニアは2018年から市民エネルギーちばの取り組みを支援し、土壌の修復と地域の再生をめざして協働しています。
ソーラーシェアリングは、耕作地の上に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を同じ場所で行なう仕組みです。幅の狭いパネルを一定の間隔で配置することで、作物の生育に必要な光を確保しています。
市民エネルギーちばのソーラーシェアリングは、災害時の停電期間中には無料充電所として市民に開放されます。
細型のパネルを間隔を空けて設置することで、太陽光が作物にも届くように設計されている。
調達:不耕起有機栽培と天然醸造
不耕起有機栽培のモデルケースをめざす
匝瑳おひさま畑は、有機JAS認証をベースとしながら、リジェネラティブ・オーガニック認証の取得を見据えて、不耕起栽培に取り組んできました。リジェネラティブ・オーガニック認証の基準の一つである「土壌の健康」では、「土壌の撹乱を最小限に抑える」ことが重視されています。
不耕起栽培とは、農地を耕さずに作物を栽培する方法です。土壌の撹乱を抑えることで、土が風雨で流されることを防ぎます。化学肥料や農薬にたよらない有機栽培と組み合わせることで、ミミズや微生物などの土壌生物が生息しやすい環境を整え、健全な土壌生態系の構築を目指しています。
パタゴニア日本支社では、ヘクタール規模の国内畑地においても、なるべく耕さない有機栽培が選択肢の一つになるよう、匝瑳おひさま畑をモデルケースとして、不耕起有機栽培の技術体系を探究しています。匝瑳おひさま畑は、パタゴニアと連携し、不耕起栽培の研究者である茨城大学の小松﨑将一教授の指導を受けながら、栽培技術の向上を図っています。
土壌の生物多様性や養分のバランスを維持するため、大麦、大豆、キカラシ、ヒマワリを組み合わせた輪作体系を採っています。大豆には「ヒュウガ」を使用しています。大豆の不耕起栽培では、条(種を播く列)と条の間隔、そして除草が重要です。一般的な大豆栽培より条間を狭く設定し、他の植物が育つ面積を抑えます。さらに、初期の段階でこまめに草刈りを行ない、雑草が伸びる前に大豆を生長させることで、大豆優位の状態をつくります。
条間30センチの密植と初期の草刈りによって、大豆が早く葉を広げ、雑草の生長を抑える。
蔵付き麴菌と木桶による天然醸造
匝瑳おひさま畑で収穫された大豆は、福井県越前市の醸造元、マルカワみそ株式会社で天然醸造されます。マルカワみそでは、蔵付きの麴菌を用い、木桶の中で自然の気温に委ねながら、約10か月かけて味噌を熟成させます。「オーガニックみそ」の濃い茶褐色の色合いと、複雑で奥行きのある味わいは、この発酵と熟成によって生まれます。
マルカワみそでは約80本の木桶を保持しており、そのほとんどが再利用されたもの。木桶は日本酒、醤油、味噌の醸造へと受け継がれ、100年以上にわたって使われる。
写真:Taro Terasawa
パートナー:研究者の知見が導く
不耕起有機栽培研究の第一人者のサポートを得て
不耕起栽培向けの播種機で大豆を播く。研究者の知見を取り入れながら、匝瑳市の圃場に適した栽培方法を検証する。
匝瑳市の圃場で不耕起栽培を始めるにあたり、茨城大学の小松﨑将一教授に協力を仰ぎました。小松﨑教授は、国内における不耕起有機栽培研究の第一人者です。茨城大学の圃場で長年にわたり蓄積されてきた、農業機械やアタッチメントの組み合わせ、播種方法、除草方法などの知見が、この取り組みに生かされています。
神戸大学の庄司浩一教授からは、3条同時に除草できる電動除草機の作製と運用について助言を受け、条間除草の作業効率向上につなげています。