コンテンツに移動
Worn Wear 買取プログラム

Worn Wear 買取プログラム

Worn Wearプログラムでは、不要になったパタゴニア製品を買い取ります。買取対象製品は、機能に問題がないパタゴニアの中古のウェアやラゲッジ、アクセサリーと幅広く受け入れ、次にそれを必要とする人に引き継ぎます。

詳しく見る

地球が私たちの唯一の株主

地球が私たちの唯一の株主

事業の繁栄を大きく抑えてでも地球の繁栄を望むのならば、私たち全員が今手にしているリソースでできることを行う必要があります。これが私たちにできることです。

イヴォンの手紙を読む

佐渡島の稜線を歩く、贅沢な旅

櫻井 奈緒  /  2026年9月8日  /  ハイク, スポーツ

荒々しいと思い込んでいた日本海は、驚くほど穏やかだった。佐渡島・金北山へ続くトレイルを歩き、海と山を独り占めするような贅沢な景色に出会った。訪れて体感してみないとわからないことがある。そう改めて実感した、歩く旅の記録。

全ての写真:武部 努龍

「歩く旅って贅沢な旅ですよね。」そう言われたことがある。歩いて旅をするから日数もかかるし、食費や滞在費も一層かかる。けれど、歩くことで自分のスピードでその土地を体感できる。時短やコスパを求める旅とは、相反することをしている。歩くことで、車なら一瞬で通り過ぎてしまう景色を自分の速度で見られるし、歩きだからこそ行ける場所もある。それが歩きならではの醍醐味だと思う。私はその特別感が大好きだ。

多くの偶然と連鎖を繰り返しながら創り出された自然の風景。そこでしか見られない景色、その時にしか感じられない空気感を味わい、充足感に満たされたい。それが、私にとっての「歩くこと」への好奇心の源なのだと思う。

佐渡島には、以前から気になっていたトレイルがある。夫と出会ってから、休日は登山一辺倒だった私も沖縄や伊豆諸島へ足を運ぶようになり、島への興味が湧いていった。そんな時に知ったのが、佐渡島の最高峰・金北山へ続く稜線の縦走路だ。日本海の島には行ったことがなく、島ならではの海と山の眺望に恵まれた贅沢なトレイルにずっと行きたいと思っていた。

10月某日、スタートは両津港から車で1時間ほど走った先にある和木登山口。行程は、そこから金剛山、金北山を経由して白雲台登山口まで歩く、約20km超のトレイルだ。1日でも歩ける距離だが、天気が良ければ星も見えそうなので、途中のドンデン高原ロッジでテント泊をすることにした。登山口からの林道を30分ほど歩くと、原生林の中を歩ける遊歩道に入る。シダ植物や樹齢300年を超える立派な杉の青々とした緑が目に入り、空気の密度が高く感じられた。

杉の葉が枯れて落ち、敷き積もったふかふかなクッションのトレイル。そこから金剛山方面へ向かうにつれて急登になり、標高が962mながらも、高山帯のような低木や小石だらけのトレイルになって、だんだんと視界が開けてきた。時折見える日本海や、佐渡島にある加茂湖が穏やかでほの白く美しい。その日は高曇りで、最初に登った金剛山山頂からは、金北山へ続くこの先歩くトレイルがよく見えた。

金剛山を一度下り、金北山へのトレイルに戻る。細く、木の根がうねるトレイルをしばらく歩くと金剛山から見えた稜線に出た。稜線は丈の短い草に覆われ、時折土も見えるような開けたトレイルで空も大地も大きく広がって見える。風がだんだん冷たく、強くなってきた。トレイル脇に生えるススキが、時折顔を出す太陽の光を受けて輝いて、風に揺れている。写真で見て、いつか実際に歩いてみたかった、海を見ながら稜線を歩けるトレイル。それを今、まさに体感している。見渡す限り、私たちしかいない。美しい風景の中を独占して歩ける充足感を味わいながら、「なんて贅沢な時間なんだろう」とうっとりしながら歩いた。

もともと登山が趣味で、休日は日本各地の山を登っていた。最初は近くの里山から始めたが、少しずつ経験を積み重ねることで、難易度の高い山に登れたり、体力がついて予定よりも奥まで歩けたり、テント泊で行動範囲を広げられることが楽しかった。そうして、たまたま読んだ雑誌でカリフォルニア州シエラ地方を歩くジョン・ミューア・トレイルを知り、そこで相棒ともいうべき夫と出会えた。その後、その夫と共に憧れていたアメリカ西部を縦断するPCT(Pacific Crest Trail)を約5ヶ月間かけて歩いた。

5ヶ月間、広大な自然の中を移動しながら暮らすという遊牧的な生活を味わえたことで、物欲はほぼ無くなり、歩くために必要な食欲が満たされれば、それだけで満足感を得られるようになった。さらに、素晴らしい景色に出会えれば、それだけでもう幸せになれる。想像を超えてくる、尽きることのない自然の美しさの中にいられる充足感は、何物にも代えがたい。それは、アメリカでも日本でもどこでも感じることができる。佐渡島を歩いた今回の旅でも、この土地ならではの素晴らしい自然に出会えた。

風が冷たく強くなって体が冷えてきた。時折吹く強い風でススキが勢いよく横になびいている。それを横目に見ながら、尻立山までの急登を、体温を上げるために急いだ。尻立山山頂には、立派な山頂看板が立っている。昼頃から登り始めたので、そろそろ日が沈む頃だ。曇り空の分厚い雲の隙間から漏れ出る真っ赤な太陽が少しずつ沈んでいく。明日登る金北山まではまだ遠いが、とても大きく見え、島の中でも象徴的な山だということがわかる。ここまで来ると、もうドンデン高原ロッジまではすぐそこ。だんだん薄暗く、冷え込んでいく中、特徴的なとんがり屋根のドンデン高原ロッジが見えてホッとした。

その日の晩は、珍しいレモン彗星が見える日だったらしく、それを目当てに来ている客も多かった。風が強かったので期待したが、残念ながら雲が厚く、星は見えなかった。代わりに眼下には、海沿いに広がる佐渡の街の明かりがきらめいて見えた。10月とはいえ、その晩は思いの外冷え込み、寝袋に頭まで潜り込むようにして眠った。

翌朝も冷え込んではいたが、風も前日より収まり、爽やかな朝だった。歩き始めは紅葉の森の中を通る起伏の多いコース。ところどころ土が削れてできた細いトレイルの間に、露で濡れた岩や落ち葉があり滑りやすかった。途中から、木々がなくなり、視界の開けたトレイルに変わる。ススキが茂る草原や、斜面が崩れてできたような土のトレイルなど、変化に富んでいた。

相変わらずアップダウンは激しいが、眺望がすばらしい。東側には両津港や加茂湖を望み、西側には、昨日まで歩いてきた金剛山からの縦走路が見える。気持ちの良い眺望と天候に恵まれた。風も穏やかで歩きやすいので、サクッと歩いてしまいそうになるが、時折立ち止まって凪の海や紅葉で色づいた草木を見つめる。程よく冷えた風が気持ち良い。佐渡には熊や猿、猪といった野生動物はいない。そのため、私たちしかいない山はとても静かだ。時折、鳥の声が聞こえてはっとする。

山頂までは、紅葉の木々の中を一気に登っていく。ゴールの金北山山頂には金北山神社と防衛省の施設がある。両津港や加茂湖、日本海、真野湾、そして佐渡の街並みまで綺麗に見渡せた。10月の日本海は穏やかに凪いでいて、私の中の荒々しい日本海のイメージが変わった。

歩く旅は贅沢だと思う。でも、歩きつづけるのは楽しいことばかりではない。空腹に耐えたり、雷雨に見舞われたりして、なんでこんなことをしているのだろうと辛くなったこともあった。それでも、そんな時でも、美しい景色に心を動かされる。

旅をするとき、最近はその地域にトレイルがないかを探している。その土地に身を置き、歩くことで、気候や文化をより深く感じられるからだ。まだ見たことのない自然を体感したいという気持ちが尽きない。アメリカでの経験を経て、それまでの「山に行く=ピークを目指す」という発想から、「山に行く=自然の中に身を置く」という感覚へと変わっていった。達成感を求めるのではなく、自然そのものを体感することに価値を感じるようになった。今回の旅も、日本海の島を歩くことで、漠然と思い描いていたイメージが具体化され、佐渡島の自然や文化への理解を深めることができた。今度は花の美しい季節に歩いてみたいとも思う。

私は、そうした体験を吸収しながら、新しい視野を得ていきたい。これからも、美しい自然を体感したいという欲求を満たすために、旅を続けていくだろう。

Patagonia Ironclad Guarantee Icon

パタゴニアは製品を保証しています。

製品保証を見る
Patagonia Ironclad Guarantee Icon

私たちはみずからの影響に責任をもちます。

フットプリントを見る
Patagonia Ironclad Guarantee Icon

私たちは草の根活動を支援します。

アクティビズムを見る
Patagonia Ironclad Guarantee Icon

私たちはギアを生かしつづけます。

Worn Wearを見る
Patagonia Ironclad Guarantee Icon

私たちは利益を地球に還元します。

イヴォンの手紙を見る
よく使われる検索語