私たちの共有の場所
先祖が誰であろうと私たちアメリカ人は、物質的にも精神的にも最も偉大な贈り物である国有地という遺産を共有しています。ヨセミテ、エバーグレーズ、アーカディア、ホットスプリングス、シェナンドー、イエローストーン、グレートスモーキーなど、私たちのほとんど皆が、この国のすべての生き物に属し、かつ自身にとって聖地と呼べる場所の名前をすぐに挙げることができます。
私たちのほとんど皆が、この国のすべての生き物に属し、かつ自身にとって聖地と呼べる場所の名前をすぐに挙げることができます。
多くの国有地は、公益信託に属するにもかかわらず、その保護の基準が曖昧です。地主が土地管理局、米国森林局、米国魚類野生生物局であるか、あるいは国立公園局であるかによりますが、それらは採鉱、掘削、伐採、牧用、娯楽といった私的利益のために使われることが許されています。原生地域指定されている土地だけが、マーガレット・ミューリーの言う「人の手の届かぬ」場所として保護され、それはアメリカ合衆国全土の5%以下にしかなりません。
生物学者のエドワード・オズボーン・ウィルソンは、できるかぎり多種の動植物の命(人間を含め)を救うために、いま私たちは地球の全表面の半分を自然に捧げるべきであると主張しています。みずからの生存のために奮闘するこの惑星では、自然の百倍から千倍の速度で種が絶滅し、地球の肺ともいうべき大気は温暖化によって灼かれ、海や川や土の自己再生能力が失われているからです。今世紀の終わりのその先まで生命を存続させるためには、地球温暖化の速度を落とし、砂漠化の進行を逆転させ、生命全体(と個々の命)が持続かつ繁栄できる状況を復元する必要があります。
ウィルソン氏の提案は、アメリカ合衆国の政策立案者たちの公の論議では取り上げられてきませんでした。それどころか、国に属する土地所有権が50%に近い西部では、巨大な煙霧機が作動しはじめたかのように、株主にできるだけ高い収益をもたらすためにできるだけ低いコストで国有地を開発しよう、という既得の欲が疼いています。私たちが自然の能力の復元方法を学ぶ必要に迫られているまさにこのとき、西部だけでなく東部や北部や南部でも、すでに存在する国有地の保護に対する攻撃がみられ、各州への土地売却と、最終的にはその私有化を求める声が聞かれます。
私たちの集合的な遺産を競売にかけようと呼びかける人びとのなかには、その目的に自然保護、再生型放牧、有機農業、あるいはモーター不使用のレクリエーションの機会増加などを考えている人はひとりもいません──それらは現在では、従来の採取産業よりも多くの職業と収入を生み出しているというのに。煙霧機は過剰な権力をもった国家に対して個人の権利に相当すると主張し、私たち皆と私たちの未来を犠牲にしながらもその利益はごくごくわずかな個人にしかもたらされない、という事実を隠し立てしています。
いまこそ私たちの資源と神聖な遺産を守るときです。私たちが所有するものを売り渡す必要はありません。むしろこの国のより多くの地域において、より多くの自然を保護することが必要です。そうすることで、私たち人間の社会と地球の健康をひとつに取り戻し、よみがえらせることができるのです。
このストーリーの初出はパタゴニアの2017年Fallカタログです。
9月30日はナショナル・パブリック・ランド・デイ
アメリカの公有地はいまなお脅威にさらされています。以下のリンクから、ジンキ内務長官になぜ野生地がこの国の魂なのかを伝えてください。