海の姉妹
最高の時間には友人が必要で、完璧が目的ではない
リズ・クラークとレア・ブラッシーとともにツアモツ諸島へセーリングの旅をしてから、4年が経っていました。私たちは出会った瞬間から何か特別なものを見つけるに違いないと確信し、ずっと連絡を取りつづけていました。
私たちは皆、とても個性的で冒険を好む女性たちです。リズはサーファーであり、セーラーであり、作家。レアはサーファー、フリーダイバーですが、とにかく何でもできる強い女性。そして私はフリーダイバー、スピアフィッシャーです。私たちの共通点は、自分にとって大切な目的や理由のために一生懸命に打ち込むということ。最初の旅以来、私たちは旅や執筆やそれぞれのプロジェクトに情熱を注ぐことで忙しく、もちろんそれ自体は素晴らしいことなのですが、ときおり足を止め、速度を落とすべきことを思い出す必要があります。私たち3人でまた集まることを計画したのは、まさにそのためでした。日常からしばし離れ、ただ一緒に海を、セーリングを、フリーダイビングを、波を共有することを楽しみたいと思ったのです。
けれどもそれは、思ったとおりにはいきませんでした。私たちがタヒチで落ち合ったとき、リズはすでに体調を崩し、動ける状態ではありませんでした。レアと私はサーフィンとダイビングを少ししましたが、いつもリズのことが気になって、海から上がっては彼女の様子を見に行きました。そうこうしているうちに私も体調を崩し、私たちの休暇は海で過ごすかわりに、屋内でぐったりと横になり、薬用効果のある草や根をすり潰してお茶を作り、最良の薬である笑いを分かち合いながら過ごすことになりました。
じつは、それが今回の旅のいちばん良いことでした。何をするではなく、ただ一緒の時間を過ごすことが大切だったのです。私たちの関係は本当の姉妹のように感じます。異なる人間ですから、必ずしもすべてのことに同意するわけではありませんが、互いを心から思いやり、とにかく互いが大好きでたまりません。レアはその存在でどんな場面も明るくし、いつも努力と尽きない貢献による価値を見せてくれます。リズは自分に正直に生き、自分にとって大切なものを分かち合うことで思いやりを深め、つねに学びつづけることを教えてくれます。リズはヴィーガン(絶対菜食主義者)で、私は漁をするハンターですが、そういう私たちが互いを尊重しあえるところも素晴らしいと思います。私が動物性のものを含まないヴィーガンの食事をリズのために用意し、それから自分とレアのために採ってきたばかりの魚を調理しようとドアを抜けると、地元の猫が私の魚に手を出していました。その様子を見て彼女は笑っていました。
私たちの社会の大部分は見せかけの完璧を目指して躍起になっているようですが、私が長年で学んだのは、完璧と感じること、そして他者と真につながることができる唯一の方法は、自分自身に正直になることです。それが、私たちが友としてとても心地よく、また一緒に過ごす時間を幸せに感じる理由なのだと思います。私たちは互いの突拍子もない行動を目にし、それを隠すこともなく、お腹が痛くなるまで笑い合えるのです。
旅の最終日まで私たちの体調は優れませんでしたが、その時間を無駄だとは決して思いませんでした。会話を交わした時間。そのほとんどは幼い子供のように笑って過ごしただけでしたが、それはまさに私たちが必要としていた時間でした。私たちの頑固で忙しい魂がやっとあきらめて休息を得るために、体がプラグを抜いたのかもしれません。あの時間は、完璧なまでに不完全で、最良の時間となりました。
このストーリーはパタゴニアのMay Journal 2019に掲載されたものです。