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パタゴニアのエンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカ:誕生物語

イーサン・スチュワート  /  2013年3月18日  /  デザイン, カルチャー

編集者記:新製品エンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカはパタゴニアの全社員にとっても一大事でした。この製品の発表に向けた多忙な準備のなかで、エンカプシル・ダウンとパーカの誕生の経緯についてパタゴニアの友人であるイーサン・スチュワートに語ってもらいました。プロの報道記者である彼の記述にはプロフェッショナルな雰囲気があふれていますが、この投稿を依頼したのはパタゴニアであるということをここでお伝えしておきます。

まず最初に感嘆させられるのが、インサレーションに使用したパタゴニア独自の耐水性ダウン、エンカプシル・ダウンだ。この1年、耐水性ダウンを使用した一般向けの各種ジャケットを市場に送り出すレースが業界全体で繰り広げられてきた。濡れるとロフトを失い、保温力がなくなってしまうグースダウンを不浸透性にするという着想は、過去数十年間アウトドア業界の渇望の的となっていた。そして数社がいち早く耐水性ダウン製品を市場に出したものの、エンカプシル・ダウンと同様の機能性を発揮する製品は、他にはない。

「このジャケットは形勢を一変させるに違いありません。ちょっとやそっとの技術的進歩ではないのです」 パタゴニアのアルパイン製品マネージャー、ジェナ・ジョンソンが満面の笑みで語る。「ゴアテックスが市場に出たとき以来の快挙ですよ」

エンカプシル・ダウンは競合他社が採用している環境への悪影響が明白なフルオロカーボン(フッ素化炭素)洗浄技術とは異なり、比較的安全なシリコンベースのプラズマ加工によって撥水性を達成しており、環境への影響が大幅に少ない。フェザーの電子が特定のプラズマ電子と結びつき、その結果プラズマ加工済みダウンのロフトが上がるのだ。化学的性質とプラズマ加工の驚くべき副作用であるエンカプシルの独特の利点は、湿った環境でももともとの重量を越えることなくダウンの機能性を維持させるという長年の問題を解決するばかりか、さらにフェザーのフィルパワー・レベルを上げる。つまり800フィルパワーのダウンが、エンカプシル加工により1,000フィルパワーを発揮するのだ。その結果、より少ないフェザーで同等の保温性が達成でき、より温かいウェアにもかかわらず総重量が減る。「フィルパワーと撥水性の組み合わせはまさに夢の実現です。これまで想像すらできなかった新たな可能性への鍵となるのです」とジョンソンは語る。

では、いったいこれらはどのように実現したのだろうか。パーカの開発は長期にわたるチームの努力によるものだが、最大の時間を費やしたのはおそらくランディ・ハーワードだろう。彼はもともと植物学者/植物生理学者であるが、この30年の大半はパタゴニアのクオリティ・ディレクターを務め、近年は先端研究開発のリーダーとして活躍してきた。ベンチュラ本社にあるこの部門は、大胆な構想とヴィジョンを追求する型破りなチームで、メンバーは「ザ・フォージ」(イヴォン・シュイナードが機能的かつ丈夫で、すっきりとしたデザインのクライミング・ギアの製造に勤しんだことで有名な鍛冶場にちなんで)というニックネームをもつ建物内にある。ハーワードはここが「純粋たる機能性を追求し、できるかぎり完璧に近い製品を目指す」場所であると言う。

エンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカはフォージで生まれた最初の製品のひとつであり、その誕生物語は数年前にさかのぼる。「どうしたら遠征に持っていきたくなるようなダウン・ジャケットが作れるか、という話をはじめたのは8年くらい前でした。重量に対する保温性に優れ、コンパクトに収納できるというダウンの魅力に、さらに耐水性をもたせる…」とハーワードは当時を思い出し、笑う。「それはめちゃくちゃむずかしいことだったんです。パタゴニア史上最高レベルの研究開発だったんじゃないかな」とつけ加えた。

その後、数年間はほとんど進展がなかった。というのもダウンに何らかの「防水性」物質を付着させる試みは、つねに接合剤の重みによりロフトが失われてダメになってしまっていたからだ。そして突破口を見いだしたのは5年ほど前。ハーワードたちは従来の接合剤に見切りをつけ、撥水成分をフェザーに直接付着させる方法を思いついたのだ。

プラズマは本質的には撹拌/加熱気体だが、同時に物質の第四状態とみなされ、結合、あるいは科学者のいう「凝結(気体から個体への相転移)」をしやすいため、それはこの新たなアプローチの明らかな候補だった。だがそれをどう達成するかについてはまだ多くの疑問があった。「まったく新しい発想でした」とハーワードは言う。その多大な変数だけを考えても、着手する前にすでに音を上げてもおかしくない方法だった。どのプラズマ形態を使用し、その特定の化学的性質がどんな様相を帯びているかということから、丈夫で最適な結合を達成する撹拌レベルやダウンの最適密度まで、考慮すべき要素は無数にあった。

そしてもちろん、このような最先端プロジェクトを請け合うのに必要な経験と器材(半導体のことを考えてほしい)を備えた大学や企業を探すという問題もあった。簡単には見つからなかったが、ようやく表面加工とプラズマを専門とするテキサス州オースティンのイオンクラッド社とパートナーシップを組み、この3年間で文字通り数千にもおよぶ試行錯誤のテストを繰りかえした。

早い話、その結果がエンカプシル・ダウンだ。母なる地球への影響を抑えた工程(ハーワードによると、全工程に要するエネルギー消費量はヘアドライヤーを作動させるよりも少ない)で実現させた、非常に軽量な耐水性ダウンである。シリコン以外の物質がほぼ皆無の、驚くほどシンプルなプラズマ化学を採用し、さらにダウン450キロの加工に必要なプラズマは1.9リットルにも満たない。「本当にすごい技術です。ガスの使用量はごくわすかで、環境的にもほとんど無害です」とハーワードは説明する。

おそらくこの改良型フェザーの唯一のマイナス面は、機能性を維持するために年1回専門的なCO2クリーニングが必要な点だろう。この不便さを考慮し、パタゴニアはオフシーズンにクリーニングが必要となった顧客のエンカプシル・ダウン・パーカの洗浄を、現在は無償で引き受けることにしている。

エンカプシルの未来について、この新たなダウンの活躍場所はビレイ・パーカに限られないとジョンソンとハーワードは語る。実際すでに他のアルパイン製品での使用も計画されている。「たしかに、この最初の製品は限られた顧客を念頭においた限定製品です」とジョンソンは言う。「でも、その他の製品にこのダウンを採用し、その可能性を試すのが待ちきれません」

そしてつねに先進的なフォージのリーダーであるハーワードは「道理にかない、また問題解決につながるすべてに採用していくつもりです」と付け加える。それゆえ、加工するダウンのバッチサイズやプラズマとフェザーを適切に結合させる時間など、エンカプシルの製造工程はいまもなお進展中だ。しかし新製品の発表にあたりエンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカを1,000着しか作らなかった理由の一部だったこれらのチャレンジは、最近になって概して打開されている。たとえば、ほんの2年前までは1着のジャケットに十分なエンカプシル・ダウンを製造するのに1か月かかっていた。それが昨年改善され、450キロのフェザーのバッチをわずか1〜2か月で製造できるようになり、パーカの本格的な製造への道を開くことになったのだ。またそれ以来、エンカプシル・ダウンのコストと製造時間は一般的なダウンに「ますます接近しつつある」とハーワードは言う。「まだまだ多くの研究開発が必要ですが、確実に前進しています。重要なのは生産サイクルと製品のあらゆる側面をできる限り完璧に近づけることです」

さらに興味深いのは、ハーワードやジョンソンをはじめエンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカの開発に携わったメンバーと話をしていると、内側の特別なフェザーはこのパーカの誕生物語の半分にすぎないことがわかる。

まず第一に、パタゴニアは長年の努力を土壇場の短絡的な利益第一主義で無駄にすることのないよう、一般的には優れたビジネス戦略と見なされる方法を避け、この先駆的な製品の市販を急がない決断を下した。チームはその代わりにがっちりと守りを固め、「このテクノロジーがどのような状況で最も役に立ち、誰がいちばん必要とするかを考えました」とジョンソンは説明する。そして内部で討議を重ね、このダウンをアルパイン・ビレイ・パーカに展開させることを決めた。耐水性を備え、比類のない軽さで優れた保温性を提供するウェアを本当に必要とするのが誰であるかを考えれば、悩むまでもない。この徐行戦術が提案されたのは約18か月前。フォージが率いるウェアの壮大なデザイン開発が開始されたのだった。

「当初から文句なしの最高の製品を作ることが目標でした。制約も締め切りもまったくなし」とフォージで働くプロダクト・エンジニアのケイシー・ショーは言う。「この驚くべきアート(エンカプシル・ダウン)が手元にあり、それを展示するのにふさわしい美術館を作るという感覚でした」 そして自分たちに課した「手抜きなし」というモットーにしたがって、基本的な構造や縫製方法から、完成品に貼り付けるパタゴニアの特製ラベルまで、徹底的なデザインがはじまった。「パーカの世界で、エンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカほど細部にこだわった製品は他にないと思います。こういうパーカは普通作りません。これはほとんど狂気の沙汰です」とショーは言う。

おそらくジャケット最大の技術革新は完璧な独立バッフル構造だろう。つまり、外側表面から裏地に貫通する縫い目がいっさいないのだ。これによりエンカプシル加工済みのフェザーは片寄ることがなく、インサレーションはつねに均一に保たれる。

機能性重視のその他の特長は、フロントジッパーを挟むバッフルを二重にしたウインドフラップ、ハーネスの着用に対応する高めの配置の大型フロントポケット(手袋をはめた手が入る大きさ)、ポケットとジッパーの周りに採用した、かさばりを抑えつつインサレーションの均一性を維持するバッフル、圧縮されやすい肩や脇の下部分の幅を細めにしてダウンの片寄りを防止するバリエーションのあるバッフル構造、隠しドローコードを備えたダウン入りのミニ・スノースカート、業界水準とは異なり、後方寄りに配置し前身頃のかさばりを軽減する内側の大型メッシュポケット、ヘルメットを付けていてもいなくてもぴったりとフィットするフードなどである。

デザインチームが検討したことには、パーカにあえて採用しない要素についてもある。ポケットの内側と顔や鼻に接触する部分のフリース素材は除外された。「はじめは肌触りがいいかもしれませんが、フリースは水分を吸収するスポンジのようなものなので、真のアルパインの条件下での使用は、結果的に顔を痛めることになります」というのが登山歴30年のショーの見解だ。従来のビレイ・パーカに見られるツーウェイ式フロントジッパーもない。ジッパーを閉めたままハーネスにアクセスできるようツーウェイ式フロントジッパーを採用するジャケットが多いなか、ショーはツーウェイ式ジッパーは壊れやすく、またエンカプシル・パーカは細身のフィットなのでハーネスの下に難なく着用できるため、使用しなかったと言う。「意見は出ると思います。ツーウェイ式ジッパーにこだわるクライマーもいますからね」とショーは語る。

結果的に、細部ごとに数十回の試作を重ね、3種類のまったく異なる「完成品」が作られたあと、発売数か月前にようやく最終製品が決定した。もちろん全段階でパタゴニアのクライミング・アンバサダーによる徹底的なフィールドテストがパキスタンやカナダやアンデスなどで行われた。

「このパーカの大半は経験と実験に基づいて進化してきたものです。このパーカはその全工程、そしてチームとクライマーの忠誠の証であり、手抜きは一切ありません」 ジャケットのリリース数日前、南カリフォルニアの冬の日差しのもとフォージの前に立ち、努力の成果を自慢げに手にしたショーはこう言う。完成品を見ていると、このパーカにチームが費やした努力や、革新や細部への徹底的なこだわりを忘れそうになる。なぜならそのすべてがクラシックと呼ぶのにふさわしい美に融合されているからだ。ジャケットを見つめながらショーはこうつけ加えた。「そのうえ、本当に美しいのです」

*本製品は販売数に達し、完売しました。

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