無料ベビー再登場
ゲーリー・ビガムはよく人にこう話す。娘のガリーはテルライドにあった無料ボックスで見つけたんだ、それを証明する写真もある、と。「父を知る人は、彼が冗談好きなことを知っています」と言うのは、現在のガリー。「父が言うことを真に受けることはできません」
そうは言っても、1993年秋のカタログに登場したその写真には、未来を予知する力が少しばかりあったようだ。「スキーは私にとってとても簡単なスポーツでした。歩くことのように自然に慣れ親しんだ、大好きなスポーツです」とガリーは語る。幼少時代はニューメキシコ州タオスでノルウェー人の母親と過ごし、夏になると写真家であり有名なプロスキーヤーだったアメリカ人の父親ゲーリーとあちこちへ旅したそうだ。
2人は毎年夏の2か月間を、ロードトリップしながら過ごした。「どこへ行っても、父は写真を撮る視点でものを見ていました。そして私に『こうしなきゃダメだよ、カメラの方は見ないで、自然にして』って言うんです」 そしてガリーはつづける。「父が旅をしながら作品となる写真を撮って私と一緒に過ごすこともできたのはすごくよかったんですけど、正直なところ面倒くさい部分もありました」と。この「すごくよかったけど面倒くさい」ロードトリップは、彼女の幼少時代の映像記録でもあった。ガリーの写真はこれまでパタゴニアのカタログに10回以上掲載されている。
それぞれの写真にはストーリーがある。「私がパンプキンの中にいる写真がありますが、父のホラ話によれば、私はそのパンプキンを食い破って出てきたそうです」と、ガリーは説明する。アイダホへのロードトリップでは、友人宅の壁に偽物のマカジキが飾ってあるのを見つけて、それをボートに積んで湖に行くことにした。友人が水中でなんとかそのマカジキを押さえている傍らで、ガリーがそれを湖から釣り上げるふりをしたそうだ。その超人的な大作は、きちんと撮れるまで2日間もかかったという。
16歳になると、ガリーは母親と一緒にハワイへ移住した。母親は引っ越したその週にガリーにサーフボードを買い与えたそうだ。それ以来ガリーはハワイに定住している。現在27歳になる彼女は、カウアイ島でサーフィンとヨガのインストラクターをしながら、彼女自身も母となった。父親と同じように、ガリーはとくに夏に旅をすることが多い。昨年は単胴船でゼロカーボン・エミッションのセーリングに出航し、今年はスカンジナビアでのセーリングレース・ツアーに出場する全員が女性のチームの調理師を務めることになっている。「3か月の実験のようなものです」とガリーは言う。「ブタンガスは使わず、島でときどき焚火を使う以外はソーラーオーブンだけで料理をして乗り切れるかどうか試すんです。旅をしているときはレトルト食品に頼ってしまいがちですが、ちょっと下準備さえしておけば、地元の人のように地元の食べ物に通じることができると思います」