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スティーリーを探せ

ジム・リトル  /  2011年5月16日  /  読み終えるまで6分  /  アクティビズム

スチールヘッドを探しに川へ入る。Photo: Matt Stoecker

スティーリーを探せ

スチールヘッドを探しに川へ入る。Photo: Matt Stoecker

パタゴニアの新しい環境キャンペーン、「アワ・コモン・ウォーターズ(共有の水)」の精神のもと、パタゴニアのエディターのジム・リトルと彼の友人たちはある日の午後、絶滅危惧種のサザン・スチールヘッド・トラウトを探しにスノーケリングでベンチュラ・リバーへ、(浅瀬ではありますが)飛び込みました。数匹のスチールヘッド・トラウトの背後にこっそりと忍び寄りながら、かつて大量に生息していたこの魚が、なぜ現在厳しい状況にいるのかを話します。

計画は平日の数時間を利用して、メキシコ料理で簡単にお昼をとったあと、ベンチュラ・リバーでスノーケリングをしながらサザン・スチールヘッド・トラウトを探そうというものだった。気温26℃、緩やかな陸風が吹く1月下旬。私たちは魚類生態学者のマット・シュテッカーとベンチュラ・リバー流域の監視人であるポール・ジェンキンという、知識豊富な2人の仲間とともに出かけた。

ブリトー(そしてフィッシュ・タコスも)を食した僕らは、かつてこの川に何千も存在し、にもかかわらず現在では幻となってしまった魚をなんとか見つけようと、スノーケルとカメラを手に3か所の川の淵に潜ってみた。1920年代には、スチールヘッドが戻ってくると子供たちが釣りへ行けるよう、ベンチュラの学校は休校したそうだ。しかし90年後のいまは、腹をこわしかねない水を一滴も飲まないようにしながら藻でいっぱいになった川を探索して、サザン・スチールヘッドが珍しくなってしまった理由を学んでいる。

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1920年代の黄金時代、ベンチュラ・リバーから大量のスチールヘッドを釣り上げるペイラノ兄弟

サザン・スチールヘッドは淡水で産まれ、稚魚となって海に向かって泳いでいく回遊魚だ。下流で待ち構える天敵から生き残って何とか大きくなったとしても、太平洋でさらに大きな生き物たちに食べられてしまう。数年後に産卵をしに生まれた淵へと戻ってくるのは、それらを乗り切ったものたちだけ。そしてそのすべての行程に必要なのが、護岸されていない十分な水の流れがある川である。つまり現在のベンチュラ・リバー河川流域では数少ない資源ではあるが、需要は非常に高いのだ。その原因はたくさんあるが、それはベンチュラ・リバーにかぎったことではない。

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スチールヘッドの産卵にとってもっとも厳しい障壁であるマティリハ・ダムは、堆積物でいっぱいで、現在利用価値はない。Photo: Jim Little

まずは26キロ内陸にある、いまでは廃墟と化した高さ50メートルのマティリハ・ダムからはじめよう。このダムは絶滅危惧種のスチールヘッドから歴史的な産卵場所を遮り、ベンチュラ・ビーチの砂をも奪い取っている。老朽化したコンクリートはいつかは撤去されることになるだろう。だがそれも、その方法に対する合意と資金があればの話だ。

その近くでは、オハイ・ロック採石場での掘削がマティリハ・クリークの北支流を岩や土で埋め、魚たちの上流への移動を妨げている。ベンチュラ郡はこの採石場から岩を購入しているため、川を堰き止めていることについては見て見ぬふりをしてきている。

また、栽培に大量の水を要する柑橘類やアボカド農園が地下水を汲み上げるため、結果として川の水位が下がってしまうという問題もある。夏のあいだ汲み上げポンプが動いていると、淵は一晩で乾いてしまうほどだ。

さらに、ベンチュラ・リバーからカシタス貯水湖へ水を流しているロブレス分水ダムがある。多くの人びとが依存しているこのダムを所有するカシタス市水域行政は、2005年には、スチールヘッドの保護のために連邦政府が水を取り上げたとして政府を訴えた。この注目すべきケースは未だ解決していないが、絶滅危惧種保護法を真剣に脅かす可能性があり、スチールヘッドにとってはいうまでもなく脅威になり得る。

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今回のスノーケリングで目撃された、たった2匹のうちの1匹。Photo: Matt Stoecker

そしてこの河川流域全体には、汚物や化学薬品、肥料、ゴミなどの無数の「非点源」の汚染が点在する。サン・アントニオ・クリークの馬小屋、サンタ・アナ・クリークの牛、農園、ゴルフ場、油田、道路、ホームレスのキャンプなどである。

それからフォスター・パークにはベンチュラ市が所有する油田が数か所存在し、現在、谷全体に高級住宅開発を許可しようという話が持ち上がっている。もし許可されれば、この川からさらなる水資源が失われることになるだろう。

海に近づくと、拡大しつづけるテイラー・ランチが広大な土地を耕地にするために、大量の水を汲み上げている。この農園は環境保護の観点から重要視されていた洪水地域にも土地を購入したところだ。

オハイ地区衛生汚水処理場は下流へ処理された廃水を汲み戻すため、もしも処理場がなければかつては活気のあったベンチュラ・リバーの極小の流れも、干ばつの年には完全に枯渇する可能性がある。けれどもこの処理水が川やラグーン、そしてそこに生息する野生動物へ及ぼす影響は不確かだ。

こうしたあらゆる不利な条件にも関わらず、丈夫なサザン・スチールヘッドはわずかながらもまだ生き残っている。そして私たちも実際にその姿を数匹目撃することができた。

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マティリハ・クリークの北支流にあるオハイ採石場から流れ出る岩と土砂。これも魚の産卵にとっての障害のひとつである。Photo: Paul Jenkin

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ベンチュラ・リバーからカシタス貯水湖へ水を供給するロブレス分水ダム。所有者はスチールヘッドが戻って来ることができるよう、魚梯を設置することを強いられた。しかしその後スチールヘッドが遡上できるよう十分な水を放流することを義務づけられると、彼らは連邦政府を訴えた。Photo: NOAA

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2匹の稚魚が泳ぐ。Photo: Matt Stoecker

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Photo: Matt Stoecker

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今回の探索で私たちは2匹の成魚と出会うことができた。写真の1匹は喉/腹部分が異様に膨らんでいる。Photo: Matt Stoecker

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