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野生に向かう保育園

ニコル・マリー  /  2016年12月12日  /  コミュニティ, カルチャー

たくさんのひな鳥がさえずるある春の日のこと、子供たちと一緒にのんびりお散歩をしていると、近くでユキヒメドリの赤ちゃんが餌を求めて鳴いているのが聞こえました。私が耳に手を当てて、よく声を聞こうとすると、子供たちも同じ仕草をし、皆で鳥の声を聞きました。「探しに行こうよ!」と子供たちが騒ぎ立てました。私たちが歩き出そうとすると、ある男の子が声を上げました。「リア先生、ちょっと待って。カラスがいるかどうか確かめなくちゃ」 この男の子はカラスが私たちのあとについて来て、巣にいるユキヒメドリの赤ちゃんを食べてしまうかもしれないことを知っていたのです。私たちはあたりにカラスがいないかどうかを確認してから、歩きはじめました。ほどなく、親鳥から餌をもらっているひな鳥を見つけて皆で眺めていると、その男の子が私の袖を引き、「リア先生、行かなくちゃ。近くにカラスがいるよ」と言いました。

私にとってそれは、園児と自然との真のつながりを示された、喜ばしい瞬間でした。子供たちは人間以外の生き物同士にも多くの複雑な関係があることを理解し、自分たちはそれらを救うことも傷つけることもできるとわかっています。注意深く観察して自然の様式に気づくという、生涯を通して役に立つ技能を学んでいるのです。さらに重要なのは、子供たちが他の生き物を助けたいという思いやりをもっていることです。地球を救いましょうと誰かから言われる前に、彼らにはみずから地球を好きになる機会があるのです。世界が真に必要としているのは、その世界そのものを熱愛してくれる子供たちです。私たちがここでしていることの本質は、子供たちの力添えとなり、そして地球の力添えとなることなのです。

このストーリーはサンタバーバラにある〈ワイルド・ルーツ〉という保育園の創設者兼園長、リア・グリッポが語ってくれたものです。〈ワイルド・ルーツ〉は「フォレスト・スクール」と呼ばれるもので、スカンジナビアとイギリスで急増し、アメリカ、オーストラリア、カナダでも人気が高まる教育運動です。すべての課程は屋外で行われ、〈ワイルド・ルーツ〉のウェブサイトでも説明されているように、

「空が屋根、木が壁、そして床は生きた地球」です。

フォレスト・スクールは学習者主導の、遊びに基づく教育哲学者(ピアジェやシュタイナーやヴィゴツキーなど)が提案したアイデアと実践に、環境保護主義を組み合わせたもので、自然が子供の幸福に与える影響についての多数の研究に裏づけられています。自然は子供のためになり、自然とのつながりをもつ子供は世界のためになるというのがその基本概念です。

この概念はグリッポ自身の体験からも立証されています。彼女は食糧事情が悪い時代のラトビアで生まれ、6 歳まで食べられる物を採取しながら森で家族とともに過ごしました。彼女の野山の植物に対する愛着は、当時の体験に結びついていると考えています。「幼児期の経験の大半は記憶以前のものであり、その結果、そうした経験は体に浸み込みます。だから子供はたとえ自然から切りはなされても、自然とのつながりを失くすことはありません」

グリッポが1996年に創設した最初の保育園は、野生的な景観に囲まれた施設にありました。しかし彼女はだんだんと、園児たちとより長い時間を屋外で過ごすようになりました。教室のなかでは手のかかる子供も、屋外ではそうでないことに気づいたのです。すべてにおいて屋外では衝突が少なく、多くの不思議な力がありました。2 年後、彼女は全課程を屋外で実施することに決めました。このような屋外学校は前例がなかったため、保険に加入することはできず、しかもこれがより大きな運動の一部であるとは思ってもみませんでした。けれどもチャレンジ精神が旺盛なグリッポは、何も恐れることはないと考えました。

現在、その大胆不敵な精神は〈ワイルド・ルーツ〉にしっかりと染み込んでいます。子供たちは木に登り、毒のあるウルシを避けることを学び、死んだ動物に出くわし、雨の日のキャンプファイヤーさえも楽しんでいます。グリッポは子供たちには先天的な知恵があると信じています。子供だって怪我はしたくありません。少しずつ冒険を許し、小さな傷やコブを経験させることは、賢明な選択の仕方を学ぶ助けとなります。〈ワイルド・ルーツ〉では子供たちに「気をつけなさい」とは言いません。なぜならそれはたんに子供の神経を警戒させるだけで、身を守るための情報は与えないからです。その代わりに、「登ろうとしている木の枝は、枯れている?それとも生きている?」など、子供たちに状況判断の仕方を教えるような言葉を使います。

適切なリスクをとることへの子供たちの権利のために、これまで以上に奮闘しているグリッポは、「恐れるあまり親は自分たちが子供のころにした冒険を子供にさせない、という風潮がますます強くなっています。親の監視がないところで遊んだり、池で泳いだりのようなあらゆることが、いまでは危険すぎると見なされるのです」と語ります。屋外での授業は公衆の目に留まるため、地域住民が危険への恐怖心を抱くことも少なくありません。子供が木登りをしているのを見て、大人がうろたえるのです。教師は地域住民と穏やかな良い関係を築きながら、幼児教育のあり方に対する一般の認識に影響を与えています。

幸いなことは、恐怖心を抱きながらも親たちは質の高い野外教育の必要性に気づき、フォレスト・スクールの運動を率先しはじめています。グリッポは地元のフォレスト・スクールに関する問い合わせメールを毎日のように受け取り、その結果、他のフォレスト・スクールも次々と誕生しています。

フォレスト・スクールから恩恵を得ているのは子供だけではありません。ウルシを見分けたり、食べられる植物を見つけたりする方法を、親は子供から教わります。自分の子供が岩や鳥や木のなかで快活に育つ様子を目にすることで、必然的に親はみずからの自然とのつながりの喪失に気づく、とグリッポは指摘します。そして彼らも失っていたものを取り戻そうと、努力するようになるのだそうです。

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