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リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換

パタゴニア  /  読み終えるまで8分  /  フットプリント, 食品

日本の農業は、気候風土や伝統、地域文化に根差して営まれてきました。私たちの将来や地球の命運を握っているこの農業分野において、これからの食や農業の可能性を探求するにあたり、科学に基づいて国際的に推奨されている管理手法や農法を日本に合う形でアレンジして取り入れながら、国内農業の進展に貢献したいと私たちは考えています。

パタゴニアは常に最善の策を探求し、社会や地球環境をより良くするための行動に取り組んできました。1996年に自社製品に使用するコットンの100%をオーガニックコットンに移行しました。そして現在も、オーガニックに満足することなく、次のステップであるリジェネラティブ・オーガニックへの移行に取り組んでいます。それは、土壌が大気の2倍、陸上植生の3倍の炭素貯留能力を持つ巨大な炭素貯蔵庫であり、ロデール・インスティテュートの研究によれば、世界中のすべての農用地がリジェネラティブ・オーガニック農法に移行すれば、世界中の毎年の二酸化炭素排出量よりも多い量の炭素を土壌中に隔離できると試算されているからです。

リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換

トカプチ株式会社:北海道内4カ所で畑作や酪農を営む、バイオダイナミック農法の実践農場。農場自体がひとつの有機体として循環することを目指し、次世代のもっと先まで地球とともに在り続けるための持続可能な農を模索している。写真:トカプチ株式会社

農業が抱える、止めなければならない拡大し続ける問題

健全な土壌は、地球の健全性や人間の健康にとって極めて重要です。しかしながら、世界中の農地において、土壌は自然による生成速度よりも速い速度で失われ続けています。そのような農業慣行で行われている従来の農業は、気候危機を深化させている炭素排出量の25%を占めています。そのように、農業は温室効果ガス排出によって気候変動を促進する産業ですが、それと同時に気候変動による多大な影響を受ける産業でもあります。

そして、このまま何も変化を生み出すことがなければ、グローバル・フードシステムのみの温室効果ガス排出量だけでパリ協定の+1.5度目標はおろか、+2度目標の達成さえも難しいとされています(Clark et al. 2020, Science)。したがって、気候危機を救うためには農業そのもののあり方やそれを消費する食のあり方を変えることも急務なのです。

リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換

有限会社 仁井田本家:「日本の田んぼを守る酒蔵」を使命とし、自然栽培稲作を行う。いずれは地元の田を全て自然栽培にすべく田んぼのがっこうを主宰。地元~外国の方までが米作りを学ぶ田では、野生の鴨たちが子育てをする。写真:仁井田本家

リジェネラティブ・オーガニックによる根源的な農業の転換
農業は地球上の陸地の3割の土地利用を占めており、農業の転換には非常に大きなポテンシャルがあります。そのために、パタゴニアは、ロデール・インスティテュートなどのパートナー組織や企業とともに世界最高水準の包括的な有機認証である「リジェネラティブ・オーガニック認証」を制定しました。

リジェネラティブ・オーガニック(RO)は、「土壌の健康」、「動物福祉」、「社会的公平性」の3つの分野を1つの認証にまとめた、既存有機認証の所持を前提とするRO認証に基づいた農業です。土壌・動物・生産者やそのコミュニティなどを1つの全体論的なシステムとして捉えて実践することで、長期的に考えて最善の方法となります。そして、業界を正しい方向へ動かすためには十分に高い目標を設定する必要がありますが、導くことができないほど遠くに進みすぎてもいけません。そこで、認証内にはブロンズ、シルバー、ゴールドという3つの段階的なレベルが採用されています。

近年、農地に生態学的な健全性をもたらす、さまざまなベストプラクティスが世界中で提唱されています。土壌侵食を抑制し、土壌生態系の機能を高めることでより多くの炭素を貯留できる「保全農業 conservation agriculture」(3つの基本原則:最小限の土壌撹乱、有機物による土壌被覆、輪作)、動物を適切に放牧管理することで土壌と環境を再生する「ホリスティックマネジメント Holistic management」、農地を一年生作物だけで利用するのではなく森林管理や畜産と組み合わせるアグロフォレストリーや森林放牧など、一見すると昔にさかのぼるような農法や管理手法が最新の科学的検証によって再評価され、最先端の希望の光として歩みを進めています。それらはまさに農業が、環境問題の一部ではなく、解決策の一部になることを気付かせてくれています。そして、ROはこれらの管理を内包します。留意しなければならないことも多くありますが、そのように農業システムの根底に変革をもたらすことができれば、農業生産だけでなく、農業に紐づく多くの課題を好転させることができる可能性があります。そして、私たちはそのように解決策の一部であり続けたいと考え、行動に移しています。

リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換

Three little birds合同会社:地域の人・環境に寄り添い、ソーラーシェアリングの圃場を有機栽培で営農。主に穀物を栽培し、不耕起栽培に取り組む。炭素を固定し、生物も豊かな持続可能性のある農業を志し、営む。写真:Three little birds合同会社

土壌に根差した解決策を日本でも
パタゴニア日本支社は、日本国内でもRO農法や、生態系やコミュニティを育むことのできる有機農業、動物福祉が満たされた放牧畜産などの推進を加速させていきます。そして、それらの方法によって生産された「環境再生を可能にする生産物」の流通と消費・選択を国内で拡大することは、味や栄養価だけの話ではなく、私たちの故郷である地球を守ることにつながる重要な選択になると確信しています。

消費の観点では、日本のカロリーベースの食料自給率は38%です(2019年度統計データ:農林水産省)。つまり、私たちの現在の日本の食生活は6割を海外に依存しており、日本の消費選択そのものが、日本を含めた世界の農業のあり方に影響を与えます。

生産の観点では、日本は国土の66%は森林に覆われていますが、次に多い土地利用は農地であり、国土の約12 %にあたる440万haを水田と畑地がおおよそ半分ずつ分け合っています(2019年度統計データ:国土交通省、農林水産省)。しかし、有機農業の取組面積はそのうちの0.5%を占めるに過ぎません(農林水産省)。私たちは国内の生産者ならびに有機農業実践者に格別の敬意を表しながら、科学的根拠と伝統的な有機農法に基づいて、「経年的に土壌の有機物を増加させ、地上部と地下部で炭素を隔離することで、気候変動を緩和する手段となること」を目的とするROへの移行を推奨していきます。

日本でROを進めていく最初のステップとして、2021年8月より、ROアライアンス(米国拠点)が公開している「RO認証のフレームワーク」の日本語訳をご覧いただけるようになりました。なお、このRO認証は国際認証であるため、途上国や先進国、熱帯地域や温帯地域などに関係なく、世界全体での普遍的な大枠(フレームワーク)を提示しているにすぎません。したがいまして、有機肥料の種類や農地のレイアウト、農業者の思想・経営方法などを事細かに規定するものではありません。

現行のRO認証では、国内で一般的に実践されている水田管理では満たすことが困難な要件が存在します(例:「土壌の健康」内の2.1植生被覆、2.2輪作、2.3最小限の土壌撹乱)。そのため、パタゴニア日本支社はROアライアンスをサポートしながら、ROのコンセプトと合致し、かつ日本の気候風土に適した水田管理について多角的な観点から調査を行っています(例:温室効果ガス排出の削減、生物多様性の向上、流域の保全)。

リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換

株式会社 坪口農事未来研究所:コウノトリが舞う自然豊かな兵庫県の北部、豊岡市で「コウノトリ育む農法」等の有機農法を通じて環境と食の安心・安全を最優先に、私たち農業者や地域の未来がどうあるべきかを考える農業法人。写真:飯坂 大

私たちの故郷である地球を救うための解決策の一つとして、農業と食を通じて生態系全体の健全性を取り戻すことは重要です。健全な土壌を構築することは、農地で健全な生態系が育まれるための基盤となります。そして、その生態系は動植物や人々を豊かにし、周辺を取り巻く自然環境やコミュニティの健やかな繁栄へと寄与することでしょう。パタゴニア日本支社は、志を同じくする農業者や消費者と協働しお互いに支え合いながら、これらの取り組みを進めていきます。

RO認証のフレームワーク(日本語訳):
https://issuu.com/patagoniajp/docs/framework_regenerativeorganiccertified

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