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ケニアのラクダ:はじめての写真

エリック・ビッセル  /  2020年12月10日  /  クライミング, スポーツ

埃っぽいアーチャーズポストの町で水とビールを補給してキャンプに戻る途中、2頭のラクダがA2ハイウェイを横切っていた。僕らがクライミングをしている、ケニア砂漠にそびえるあの山を背景にした構図だ。JTが車をわきに止め、僕らはそのシーンをスナップに撮ろうと外に出た。最近までこの道路は泥道で、アーチャーズポストがケニア最北の舗装路だったという。今は黒いアスファルトが北はエチオピアへ、東はソマリアへ続いている。ラクダが振り向いてこちらを見た時、それを写真に収め、車に飛び乗り、キャンプに向かった。

チームは4人。僕にとってケニアやサンブル地方は初めてだったが、ケイト、ブリッタニー、JTは前年もここに来ていた。目を皿にして、慣れない状況に右往左往していると、他の3人は目的に沿って着々と前年の足跡をたどっていた。この旅の目的は、オロロクエ山の赤茶けた険しい南西壁で3人が既に着手していた未完のルートを完成させることだった。蒸し暑い海外のクライミング山行で鍛えられたメンバーに対し、こちらは素人同然である。2年ほど前にベネズエラの有名な卓状台地を登った経験はあったが、その時はほとんど不測の事態に遭遇せず、多くの幸運に恵まれた危なっかしい遠征であり、今回の3人が立てたような計算された計画とは対照的だった。大人の中に子どもが1人。僕は海外で携帯電話サービスが使えることも知らなかった。親切なケイトが彼女の携帯から短いメッセージを送らせてくれた。

チーム最年少ということで、精一杯登り、写真を撮り、旅について多くを学ぶことに徹しようと決めた。ケイトとブリッタニーは長年前からパタゴニアのアンバサダーで、この数十年間に彼女たちの旅は、冒険的クライミングの写真付きストーリーとなって、このブランドに取り上げられていた。数年前から子ども時代のカメラ熱が再燃し、カメラを片手に旅にでることでイメージが膨らむことが分かった。将来の収入を当てにして長焦点レンズと航空券を買い、彼女たちに合流するためにナイロビ行きのフライトに搭乗した。

「この登攀を終えるまでに、数千もの写真を撮った。日の出、日没、鳥の飛翔、複雑で急なポケットを軽快に登るケイト、親指のひと押しで身を翻すブリッタニー、オロロクエの泉の泥底から水をすくう様子や長い1日を終えて徒歩でキャンプに戻る時に見た月の出。」

岩山までのドライブがこのクライミングの核心部だと冗談を(半ば本気で)言い合う。海外遠征ほど故郷を吹き飛ばす経験はない。ケニアでは車は右ハンドル、左側通行だ。やったことのない人のために説明すると、それは鏡を見ながら自分の髪を切るようなもので、何かが逆さまに感じられるが、結果はもっと現実的である。ナイロビからオロロクエ山のあるサンブル地方までは約350キロの流れの速い2車線交通で、ゲームボーイのレーシングゲームみたいにあらゆるワナがある。長年かけて赤い泥で覆われた岩が作る天然の減速帯、ブラックホール並みに大きなくぼみ、超大型の貨物トラックが、ちょっとでも気を緩めるとパンクさせるぞ、食うぞ、押しつぶすぞと脅してくる。

買い出しのために立ち寄った田舎町で、SUVの埃っぽいウィンドウに映る自分たちの異質な白さに見入った。通りすがりの僕らの前で、それぞれの人々の世界が動き、日常を紡いでいた。ガラス、スチール、ガソリンと、商品ごとに仕切られた店舗の外で人々は握手を交わし、縁石の上で果物が売られ、僕は目を奪われ、カメラを掲げ、次々と写真に収めていく。いたるところに色彩が溢れていた。明るい建物、手書きの標識、凝った装飾のモーターバイク。ハンドルにぶら下がるタッセルは、車窓を横切る時、風の中で揺れていた。イギリス軍特殊部隊の基地や金持ちのサファリを通じて、白人の集団がケニア北部を訪れるようになった。僕らはそのどちらでもなかったが、この2つの集団がこの国に刻んだ空間に紛れ込んでいた。

遊戯場のドライビングゲームでリゾート巡り(途中、カーキ色の服を着たツーリストで混雑するホテルの屋外プールで、ドライブ中の背中の汗を流した)をするみたいに走っては止まり、サバチェキャンプへ向かった。これからの2週間、オロロクエでの本拠地である。3人のメンバーは昨年来の友人やホストと抱き合い、旧交を温めた。僕らはオロロクエの北側、光と影と緑の美しい赤土の谷にあるアシ葺きの小屋に落ち着いた。JTが前年の装備を残しておくよう手配していたので、僕らは会話しながら未完のルートに挑む準備を重ねていった。

岩壁への最初の取り付きは、極めて淡々としていた。真昼には容赦ない太陽が岩肌を這ってきて、ただでさえもろい緑藻の薄い層が縮み上がり、焼けたクリンプの表面は塗装がむけたようになる。どれが持ちこたえ、どれがビール缶を振った時のように暴発するか分からない。暑さと所々の崩壊するホールドにもかかわらず、僕らはまるで期限に追われるようにルートを追求し、そして他のクライマーたちが興奮し、未登の岩壁の残る部分に挑みたくなるようなアプローチを残すよう精一杯努めた。鳥の巣穴の間を縫うように登る。彼らの糞の堆積物は30メートルの筋となり、数マイル先の舗装路からも見ることができた。クライミングはいい。1つ1つのピッチが多様性に富んでいて、挑戦的で複雑だ。広大で急峻な岩壁にルーフ、スラブ、コーナーが連なり、最も抵抗の小さいラインがぼんやりとだが分かった。

真昼は暑さを避けて頂上の大きな石の下や岩壁基部の木陰で昼寝をした。ロープを設置し、それを利用して開拓中の各ピッチに通い、オロロクエが赤道の獰猛な太陽の方を向く頃になると安全な日陰に逃げ込んだ。固定ロープを使用してルートを作ることはベストなスタイルではなかった。それは自分たちが描いたルートを完登するために、しかも安全に、何度も挑戦できるようにするために、僕らが取った妥協策だった。

そのどこまでも過酷な作業の中で、右側の1マイルほどの切り立った未登の岩場について、固定ロープを使わず、いきなりグラウンドアップで登ることを想像していた。その「純粋」なスタイルは、この厳しい暑さ、行き詰まるホールド、体重をかけたら壊れるクリンプでは、ほぼ間違いなく失敗しただろう。それでもそのスタイルによる初登でしか味わえない、精鋭たちの未知の世界を想像した。しかしこのルートに関しては、僕らは上から岩壁を吟味し、さらに固定ロープで下見をして追加情報を得た上で、最善のルートを作ろうと決めていた。思うにどちらのスタイルにも意味はあるが、結果は全く異なる。皮肉なことに、ラペル(懸垂下降)で下見をする倫理的に「劣った」スタイルは、一般的に将来ほかのパーティが楽しめるようなルートを開拓するが、グラウンドアップという「優れた」スタイルは、伝説として称えられたとしても、モヤモヤの膨らむ悪名高いルートを残しがちである。ケニア以降、僕は両方のスタイルでルートを開拓した。この分岐路(つまり、岩壁の下から始めるか、上から始めるか)での意思決定は白か黒かではない。この論争はケニアの冷えたタスカービールでも飲みながらするのがベストだと僕は思う。クライミングが手の届くアクティビティでありながらも、クライマーにとって憧れのルートが存在するためには、どちらのスタイルも必要だ。

この登攀を終えるまでに、数千もの写真を撮った。日の出、日没、鳥の飛翔、複雑で急なポケットを軽快に登るケイト、親指のひと押しで身を翻すブリッタニー、オロロクエの泉の泥底から水をすくう様子や長い1日を終えて徒歩でキャンプに戻る時に見た月の出。ケイトとブリッタニーは、これらの写真がパタゴニアのしかるべき人々の手に届くよう力添えしてくれた。

山行を終えて、僕はヨセミテのパークレンジャーの仕事に戻った。オフィスから100ヤードほど歩けば、村の中心に石と木でできた郵便局があることを思い出した。グリーンのポリエステル地の「パークサービス」パンツで、僕はリノタイルの床にひざまずいて、私書箱の小さな扉に付けられた金色のダイアル鍵を回した。その中には、小包の到着を伝える再利用されて擦り切れた黄色のメモがあった。紙切れを窓口に持っていくとジョン(世界で最も親切な人の1人)が分厚い保護封筒を持ってきた。当時、編集部の写真担当だったジェーン・シーベルトからの写真に対する手書きの礼状だった。9月17日付けカタログのマットな質感の見開きを開くと、あの暑さ、岩の感触、ラクダのゆっくりとした歩み、JTの運転でナイロビに戻る車中で、ガタガタと通り過ぎる世界を見ながら感じた感謝と畏怖がよみがえった。僕のカメラは数々の瞬間を絶好のタイミングで捉えようと、開けた車窓にぶら下がっていた。

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