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シエラ山脈のスノーウルフ

マックス・ハマー  /  2019年11月12日  /  スノー, スポーツ

マウント・ホイットニー西側の急斜面、米国で最も高い山の頂からすぐの場所。僕たちは正確に滑降しなければならなかった。コツはサイドステップとストックを多少使うことで、僕たちスキーヤーにとっては大した問題ではない。けれども、このグループにはスキーヤーとスノーボーダーの両方がいた。高山での滑降にはスノーボードは使わないというのが一般的だ。こんな緊急時に目の当たりにするのは、グループの分裂か、それともスキーのみの滑走か。すると、スノーボードの達人であるニック・ラッセルが、静かにそして巧みに力強いスラロームのターンを始めた。岩を避け、柔らかな場所を捉えながら、かなりのスピードで何百フィートもある丘を横切っていく。その滑らかな動きで、彼はまだ見えない次なるクーロワールへと僕たちを導く。これほどに道具と密接な関係を築ける人がいるのだと、とても驚いた。まさに「優雅」という言葉がふさわしい。ニックのスノーボードは純粋に優雅であり、彼と共に高山に行くことは特別な体験だ。

東海岸でのスノーボードは、のるかそるかの姿勢が求められる。スノーボードはコネチカット州生まれのスポーツだ。ニックは可能なチャンスをすべて手にしてきた。バーモント州の〈ストラットン・マウンテン・スクール〉で、彼の友人であり、現在、パイプのレジェンドであるダニー・デイヴィスやケビン・ピアースなど優秀な仲間たちと共にハーフパイプを学んだ。東海岸の高さ7メートルほどのスーパーパイプに入れば、そこから出るには攻略するしかなく、エッジコントロールとエアーの感覚、そしてひとつの動作から次に移るフローは必ずマスターしなければならない。それは決して容易なことではない。ニックは上達することに夢中になった。持ち前のひたむきさで人間ができる極限まで、ボードに乗った。パイプで過ごした時間を最大限に活用するには、登山が最も効果的だった。そして今、山の麓から頂上へ、さらにまた麓へとナビゲートするニックが目の前にいる。東海岸で磨きをかけた彼の見事なスキルが輝く。

アドベンチャーのパートナーとして、ニックはこの上なく勇敢な態度の持ち主だった

ホイットホイット(僕たちの体力を奪った美しい山のニックネーム)の旅は、2週間前にネバダ州リノからスタートした。集まったメンバーは自転車に荷物を積み、いざ最高のアドベンチャーへと旅立った。リノからマウント・ホイットニーまで、その途中にある山々も含めて自転車で行くのかとニックにたずねると、彼はためらいもなく「そうだ」と答えた。そして、彼自身は自転車を持っていないが、おそらくルームメイトから借りられるはずだと言う。過酷であり、良質な雪の可能性も高い高山も通るのであれば、その実現はニックの肩にかかっている。自転車での旅や、リストアップした山への登山で疲れ果てているなか、ニックはうっかり靴下を1足しか持ってきていなかった。細かいことだが、大抵の人はそれに気づいたらパニックになるだろう。だが、彼は一度も不満を言うことはなかった。アドベンチャーのパートナーとして、ニックはこの上なく勇敢な態度の持ち主だった。ニックのスタミナを得たチームは、最高の山男を手に入れたのだ。

ほとんどの人が、延々と続く上り坂を歩きつづけると、心は何も感じなくなり、肺は空っぽになるが、ニックは前に出てフリースタイルラップを披露しているようだった。実際のところ、彼は嬉しそうに、スノーボードを担ぎながら駆けるように登っていく。彼はいつももう1本頑張りたがる。たとえ、その1本が垂直方向に1,500メートルも進むものであってもだ。ホイットホイットの旅は、僕たちのほとんどが自転車で雪線までたどり着いた時点で完全に疲れ切っていた。山頂を目指すことは、空になったタンクの底から点火するガソリンを探すようなものだった。僕なんかは立派な1本を滑り終えたらこれでよしと思ってしまうが、ニックは相変わらず、新たな山頂の手がかりを捉え、登りはじめる。残された僕たちは、頑張ってあとに続くか、彼のショーを鑑賞するかになる。いままで体験したことのないハードでスタミナを要する自転車の旅から戻ったとき、僕らの多くが食事を取るために起き上がるだけで、何週間も眠ったと言っていた。一方、ニックは1日だけ家に帰り、例の1足の靴下を洗って再びギアを詰め込むと、もっとやってやるぞと、次はハーフパイプの仲間であるダニーとケビンを連れて戻っていった。

ニックは僕に、冬の夜はベッドよりも星空の下で過ごす方が多いと言った。シエラ山脈の冬は、20メートル以上もの雪が降る。そんな大変な環境の中、テントにしゃがみ込んで野菜料理を作ったり、雑談を楽しんでいるニックの姿が想像できる。嵐が山頂や谷を雪で覆った後、彼は静かに起き上がり、その恩恵を手に入れるのだ。自分自身がそこに身を置いたからこそ、自分が適切なタイミングに適切な場所にいることを分かっている。今年の冬も、シエラ山脈で過ごすニックにはほぼ例年と変わらない。それに加えて、寒さの厳しい2月、ワイオミング州のティトンの山々を放浪した。地元の人々いわく、3週間、来る日も来る日も文字通りドリームラインに印をつけながら、かつてあまり見たことのない方法で山をぐんぐんと進んでいったそうだ。人によっては一生かけて達成することを、その短期間でニックは成し遂げた。いま、彼はどこにいるのか。アメリカ西部の星空の下で眠り、名うての「ハイシエラ」(シエラ山脈の別名)の地図を、彼独自にさらに広げながら、また別の過酷なシーズンの終わりをとことん楽しんでいるところだろう。最後の雪が消えてなくなる日まで。

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