なぜ、食品なのか?
なぜパタゴニアは食品をつくり、販売しているのか?むしろ、なぜそれをしないでいられるのか。
アウトドアアパレル企業が食品を販売するとは、一体どういうことか?同じ問いは、1968年にも向けられた。登山用の新しい道具を鍛造していた私たちが、突然ショートパンツやシャツ、パンツなどを売りはじめたときだ。企業が「その道にとどまる」ことを拒むたびに、懐疑は生まれる。しかし起業家として、私はあらゆるところに機会を見ている。そしてアウトドアを愛する者として、自ら生み出してしまった破壊的な習慣から、郷である地球と、そこに生きるすべての生命を救う方法を探している。
私にとってプロビジョンズは、たんなる投機的事業ではない。それは人類の生存に関わる問題だ。
我々がいまの道を歩み続けるかぎり、人類の行く先は厳しいものになる——私は長年、そう警鐘を鳴らしてきた。地球の状態は深刻で、多くのリーダーは冷笑主義や利益追求に傾いてしまっている。しかし、それが唯一の道ではない。企業も社会も、絶望や無関心を退け、私たちすべてを支えうる未来を形づくることができる。工業型畜産や、汚染された空気や水、そして四半期ごとの利益を倫理の基準とするあり方を、私たちは拒むことができる。
それでも、私たちは食べなければならない。私は、変化の可能性が最も大きいのは農業にあると考えている。そして、それこそが私が関わりたい革命だ。
効率と利益を最大化を追い求めるなかで、現代の工業型農業は、一年生作物の単一栽培や、有害な除草剤・農薬、化学肥料、そして水の浪費的な使用に依存している。その結果、表土は、本来回復する以上の速さで失われ続けている。
では、この仕組みの中で私たちが口にしているものは何か。抗生物質や成長ホルモンを投与された肥育場の牛肉、工場的に育てられた鶏肉、味わいの乏しい卵、化学物質にさらされた遺伝子組み換え(GMO)作物、そして風味や栄養ではなく、大きさや成長の速さで選ばれる果物。仮にこの工業型農業を維持する方法を見いだせたとしても、その代償は大きい。収益の減少、何百万もの小規模農家の離農、有毒化学物質による人間と生態系へのリスクの増大、そして栄養価の低下を招くことになる。
『Journal of the American College of Nutrition』に掲載された研究は、過去半世紀にわたり、43種類の果物と野菜に含まれる主要な栄養素が「確実に減少している」ことを示している。同じ研究では、祖父母の世代がオレンジ1個から摂取していたビタミンAと同じ量を得るには、現在では8個食べる必要があるとも指摘されている。これらをはじめとする同様の研究を踏まえ、『Scientific American』はこう述べている。「より健全な農産物の鍵は、より健全な土壌にある」
善意から始まったビッグ・オーガニックも、いまや生産量を増やし、利益率を高める手段を技術に求める大企業に支配されている。どこかで聞いた話だろう。もしそれが未来だというのなら、水耕栽培のブドウでまともなワインをつくるのは、せいぜい頑張ってみることだ。
私には、私たちの優先順位はどこかで狂ってしまったように思える。
幸いにも、より良い道はある。リジェネラティブ・オーガニック農法は、高い収量を実現しながら土壌の健全性を高める。そして放牧されたバッファローは、大草原という地球有数の炭素貯蔵システムをよみがえらせる。ロープで養殖されるムール貝は、水をきれいにしながら良質なたんぱく源を生み、多様な生態系を支える。地域に根ざした選択的漁法は、数の少ない種に害を与えることなく、持続可能な魚類資源を利用することを可能にする。こうした例が示すように、袖をまくって食品の世界に向き合うほど、最善の方法はしばしば、古くからある方法であることに気づく。偉大な環境保護主義者のデイビッド・ブラウワーの言葉を借りれば、「振り返ってこそ、一歩を踏み出せる」のだ。
プロビジョンズを手段として、私たちはその転換を実践し、新しい未来へ一歩を踏み出している。地球を枯渇させるのではなく、再生しながら、風味豊かで栄養価の高い食で満たされる未来。土壌の健康を育み、動物の福祉を確保し、農業に関わる人びとを守る――そうした方法で食品が生産されることを示すリジェネラティブ・オーガニック認証が広く根づく未来。要するに、私が言いたいのは、問題ではなく解決の一部となる食のことだ。
それが、私が関わりたい革命だ。なぜパタゴニアは食品をつくり、販売しているのか?私にとっての問いは、むしろ、なぜそれをしないでいられるのかである。事業を成功させるのも、人びとの生活を豊かにするのも、必要な条件は同じだということを、私はこれまで以上に確信している。つまり重要なのは3つ、食品、水、そして愛だ。